数学科(学部)の学生生活と就職活動について

数学科というと、何だかんだ難かしいことをやっているとか、計算ばかりやっているとかみなさん色々なイメージを持たれるようです。

そこで、実際に数学科で4年間過ごした私の経験をもとに、誰かのためになるかもしれない事を書き連ねようとおもいます。 

 

 

 

簡単な自己紹介

わたし自身は地方の国立大学の数学科を卒業し、現在はとある旧帝大の大学院に在籍しています。外部からの大学院受験を経験しました。こちらについては、また別記事で書こうと思います。

 

数学科で学ぶ事

数学科ではもちろん数学を学ぶのですが、高校までの数学とは雰囲気が多少異なります。高校までは、何か問題が与えられて、問題文の条件を数式で表現して、必要に応じて公式などを用いて解くというプロセスが多かったと思います。それに対して大学では、数列の収束性や実数の構成などを緻密に議論します。つまり、高校までは用意された道具(定義)とその性質(定理)を使って問題を解く。大学(学部)では道具を用意しその性質を証明するという事をします。以下、少しだけ難かしい話をします。数学科の学生が初めに躓くものとしてε-δ論法などがあります。これは数列が収束するとはどういう事かという事を定義するものです。記事の最後に詳細を書きます。専門は大きく分けると代数、幾何、解析の3つに分かれます。代数ではガロア理論によって5次方程式は解の公式を持たない事などを学びます。幾何ではトポロジーの考え方によってドーナツとコーヒーカップは同じ形と見なせる事などを学びます。解析ではルベーグ積分などを学び面責の概念が拡張されます。難かしい話はこのくらいにしておきます。また、多くの数学科生は工学部生が日常で使う数式などには馴染みが薄く応用数学の詳しい事は分かりません。

 

数学科の学生生活

数学科での日々は良くも悪くも自分次第です。他の理系学部とは異なり、実験というものはないので、講義で忙殺されるような事はありません。講義自体も出席点のようなものもほとんど無く、試験の出来がそのまま成績となる感じです。講義以外の時間を充実させている人も多いです。意外かもしれませんが、恋人がいる人の割合も結構高いです。以下、学年別に書きます。

1年次

専門科目はほとんど無く、他の理系学部同様に教養数学(微積分や線形代数)を学びます。他には英語や一般教養の授業もあります。時間割はスカスカでもパンパンでも無く一般的な大学生という感じです。ただし、他学部他学科に比べて教職の講義を受講する人が多く、そのような人は5限まで講義があったりとやや大変になります。それでもサークル活動やバイトをする時間は十分にあります。

2年次

専門科目の割合が増えてきます。代数、幾何、解析の基礎を学びます。時間割は1年次とほとんど変わらないか少し空きコマが増えます。

3年次

順調に単位が取れていれば、講義は専門科目だけになります。その中でも自分の専攻する分野によって科目を選んで受講することになります。人によりますが、1週間(平日)のうち2日くらいは全休の日が出来たりします。 他学科はこの辺りから実験などにより拘束時間が増えて来るようですが、数学科ではそのような事はありません。後期には所属する研究室を選ぶ事になります。希望者が定員を超えた研究室は成績または話し合いによって配属が決まります。

4年次

問題なく履修が進んでいれば、研究室に所属し先生とのゼミが開始します。基本的にはゼミの日だけ大学に行けば良いので時間的な余裕はあります。ただ、ゼミはこれまで適当にやって来た学生にとっては相当に厳しいです。専門書を舐めるように読まなければなりません。本を自分で読んでノートを作り先生の前で発表します。本には自明であると書かれていても学生にとっては自明でない事が多く、なぜ成り立つのかを自分で証明しなければなりません。発表では、先生からたくさんツッコミをもらいます。準備がいい加減だと、黒板に張り付けの刑にされたり、開始5分で「今日はここまで」とか言われてしまいます。入念に準備をしても、分かった"つもり"になっている事に気付かされます。その分真面目に取り組めば、ロジカルな思考は相当に鍛えられます。この辺りは就職活動などでも生かされます。数学科でのゼミがどのように行われるかは以下のリンク先を見ていただければ想像しやすいかもしれません。かなりハードな事が書いてありますが事実です。

How to prepare for seminars

数学科生の就活

卒業後の就職先としては教師、公務員、メーカー、金融系など幅が広いです。理系ではあるものの、研究がすぐに活かせるような企業は少ない為かいわゆる文系就職が多いようです。研究室からの推薦のようなものはありませんが、他学部や他学科と比べても就職状況は良い部類です(少なくとも私の大学では)。就活においては数学科だから不利という事は私や友人の経験上でもありませんでした。むしろ数学の素養がある事を評価してくれる企業もそれなりにあります。ただ数学科生ならではの苦労する点もあります。エントリーシートや面接などでゼミでの研究内容を聞かれたときに、真面目に答えてもまず伝わらないです。この点については予めしっかり考えておく必要があります。まとめると、数学科に進学する事で就職先が制限されるような事はなく、かといって特別なルートが用意される訳でも無く、本人次第といった感じです。(これはどこでもそうかもしれませんね)

 

まとめ 

  • 理系他学部と比べると拘束時間は短い
  • 空いた時間をどう使うかは人それぞれ
  • セミナーは厳しいが、得るもの多し
  • 就職先は幅広い
  • 就職率は良い
  • 数学科で良かった(個人的感想です)

数学科がどのような場所か書いてあるページはそれほど多くないので、自分の経験をもとに私も書いて見ました。数学科の雰囲気を知りたい人に参考になれば幸いです。